COLUMN
渋めのユーミン攻略法


 1    こんな曲も聴いてみよう
更新日時:
2022/01/04
: 2010/04/13
1972年のデビュー当時、若者の間で主流になっていたのは4畳半フォークと呼ばれる極端に歌詞優先の曲であり、貧しさを純愛で糊塗する風景に酔いしれる者が多かった。そこに登場したのが中の上流階級風の小道具を使った歌詞とメージャー7th系のサウンドを巧みに操った荒井由実である。
その歌唱力よりも創作性を重視して翌年本格デヴューさせたアルファレコードの村井邦彦氏の感性にたいしては脱帽という以外言葉が見つからない。なぜならこのユーミンサウンドが10年かけて一般庶民に雨水のごとくじわじわと浸透し、我が国歌謡界の土壌を変質させてしまったからである。作詞面で特徴的なのが時間感覚であり、死と真正面から向き合った佳作も目立つ。そして、夏から秋、夕方から日没にかけての移ろいゆく自然界描写の色彩感覚は他の追随を許さない。
 
サウンド面での特徴のひとつは「転調」である。'90年代に流行(はや)った唐突なそれではなく、巧みではあるが何気ない手法は転調しなければならない必然性さえ感じさせてしまう。さらに案外気づかないのが自然短音階の多用であり、それは前述の色彩感とのコンビネーションにより、日本の四季の美を見事に描く。今回は「恋人がサンタクロース」のような大御所はあえて横におき、初期を中心に「シブめのユーミン」を選んでみた。
(参考文献:月刊カドカワ'91年1月号(角川書店))
(本文初出:「らいぶらりーにゅーす 九」(ヤマハ音楽振興会資料室広報紙,1996年7月)
(カッコ内)はアルバム名
*ベルベットイースター (ひこうき雲)
*海を見ていた午後(ミスリム)
*晩夏(ひとりの季節) (14番目の月)
*ロッヂで待つクリスマス(流線形'80)
*最後の春休み(OLIVE)
*時のないホテル(時のないホテル)
*スラバヤ通りの妹へ(水の中のASIAへ)
*NIGHT WALKER(REINCARNATION)
*不思議な体験(VOYAGER)
*午前4時の電話(NO SIDE)
 



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