(前回からつづく)
テレビ画面で見るノーネクタイの政治家たちはまるで健康診断を終えて職場に戻ってきたサラリーマン然としている。画面上で公に姿をさらす人は「ネクタイはずしただけ」のファッションではいただけない。ジャケットやワイシャツにも、もう少し工夫がほしい。
あ、これは礼儀上の問題で言っているのではない。
ご本人のためにアドバイスしているだけではなく、視聴者にも「恰好いい姿」を提供してほしいと思うからだ。年配になると、首周りの老化がめだつこともある。首周りの処理には気をつかってほしい。
また、ノーネクタイ化が進んで目立つようになったのが、胸のポケットチーフだ。以前は「キザな」印象が強かったポケットチーフはパーティの場以外ではあまり見かけなかったが、最近はアナウンサーや文化人を中心に勢力を増している。
1975年、警視庁が要人警護のためのSP(Security Police)を創設した。佐藤栄作元首相の国民葬の場で、当時の三木首相が暴漢に殴られた事件がきっかけになった。
そのときの写真を見るとSPはサングラスをかけ、胸にポケットチーフを差し、いやに派手な格好をしている。それまでの「影の警護」から「見せる警護」に方針転換したのだそうだ。(1) 当時、街頭でポケットチーフを見ると、キザな印象を持つ人がほとんどであったと思う。
近年のノーネクタイ化により、ポケットチーフのキザ感が薄らいだ感がある。
ともあれ、クール・ビズを実践するみなさま、coolなのは恰好だけでなく、仕事そのものもcoolに(かっこよく)こなしてほしいものだ。 (この稿おわり)
参考文献:
(1) 藤井裕介2012「サザエさんをさがして」朝日新聞(7月28日)所収
竹林滋・小島義郎編1991「ライトハウス英和辞典」研究社
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