COLUMN
アレンジは世につれ、世はアレンジにつれ
〜私的・日本のポップス60年史
 


 16    ベース音指定コードの定着
更新日時:
2020/11/10
 
 ベースという楽器の役割は当然、バンドの中の最も低い音でビートを保つことである。この頃までのポップスでは、ランニングベース以外はコードのルート(クラシック和声では根音)を刻むことがほとんどであった。
それが1970年代から様変わりし、多種多様なベース音指定パターンが普及していく。
その中で、特記すべきはW→X7/W→Vm→Ym(key of C:
F→G7/F→Em→Am)という進行である。
W(F)はWmaj7(Fmai7)となることもある。
クラシック和声では「属和音の第三転回の根音が主和音の第二転回の根音に進む」
と解説される用法の変形である。
 この進行が使われた最初のヒット曲は1975年の「卒業写真」(荒井由実作詞・作曲・歌)かと思っていたが、その前年のチューリップのヒット、「サボテンの花」(財津和夫作詞・作曲)ですでに聴かれる。
 
 もっとも、荒井由実の曲では「サボテンの花」と同年の「私のフランソワーズ」ですでに現れる。
この進行はサビの頭に置くことが多く、その後の日本のポップス作りの定石となった。
その後のヒット曲では「Yes,No」(1980年、小田和正作詞・作曲、オフコース・歌)、「悲しい色やね」(1982年、康珍化作詞・林哲司作曲、上田正樹・歌)、「M」(1988年、富田京子作詞、奥井香作曲、プリンセス・プリンセス・歌)、「あなたに逢いたくて」(1996年 松田聖子作詞、松田聖子・小倉良作曲、松田聖子・歌)とこの系譜が続く。この進行は後年、ネット時代に入って、「ニコニコ動画」の某投稿者により、「J-POPの黄金進行」と名付けられ、より広い人口に膾炙するようになる。
 
 



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