COLUMN

MOOVIN' JAPANESE 〜揺れ動く日本語たち

 28    ブレイク中
更新日時:
2010/07/25
2006/01/03
 
「ブレイクする」」という表現が主にJ-POPの世界で使われ始めたのは確か1990年代初頭のTVドラマ・タイアップ曲全盛時代だったと思う。
元々は英単語「break」のいくつかの意味の中の"daylight is beginning"(開拓社刊:現代英英辞典,1968)から転じて日本語化した用例であろう。
breakは"interuppt the continuity"(同辞典)という意味合いが強い。あたかも飛び魚が水面下から抜けて飛び出す感じがこの言葉によって表現される。
 
ちなみに知り合いの帰国子女に「彼はブレイクした」の英訳を聞いたところ、やはり「He has been broken」と言うわけはなく、「He has been(gotten) a stardom」と言うしかないらしい。しかしこれでは「いきなり」というニュアンスが出ていない。
 
帰国子女とのこのやりとりの中でハタと気づいたことがある。無理矢理英訳しようとすると自ずから受動態になるのだ。そう言えば、彼が「勝手にブレイクした」のではなく「ファンによってブレイクさせてもらった」、あるいはプロダクションやメディアによって強引に「ブレイクさせられた」のが、この言葉の本質なのである。英語、というより英文法が論理的な所以である。
決してアーティストが自らの努力だけで「ブレイク」したわけではない。ヒヨコが卵の殻を「ブレイク」するけなげさだけを表現しているわけではないのだ。
こうして見事に和製英語が定着してしまったわけだが、ある時期から「****(歌手やバンド)は今年になってブレイク中だ」という表現も出てきた。これには最初は違和感を覚えた。「break」というのは一瞬の出来事なのではないか?
 
飛び魚は水上に舞ってもすぐに波間に消える。。。。。ということは「ブレイクする」と言った場合、そのアーティストは花火のようにすぐに消えるという意味合いだったのだ。
なるほど。「ブレイク中だ」。。。。含蓄のある言葉ではある。
 
と、ここまで書いて気づいたことがある。
breakの名詞用法は「休息、休止」。これは音楽用語でもある。たとえば「彼は今年になってブレイクした」と言うと、芸能活動休眠中の意味にもなり、現代人が表現したい内容とは全く別の意味になってしまう。これは困った。この分析についてはもう少し時間をいただきたい。
 



| Back | Index | Next |


| ホーム | プロフィール | コラム | コラム | コラム | コラム | コラム | コラム |
| フォトギャラリー | フォトギャラリー | | | リンク集 | フォトギャラリー | フォトギャラリー | コラム |


お問い合わせ、ご連絡はこちらまで。