COLUMN

MOOVIN' JAPANESE 〜揺れ動く日本語たち

 29    ヤバイ
更新日時:
2010/07/25
2010/06/03
 
元々はアウトローな方々の隠語だったのが、確か1960年代に一般化したもの。
手許の広辞林(1958,三省堂)には「官憲の手配がきびしく危険である(隠語)」とあり、この頃にはまだ戦前社会の残滓が見られる。
例えば、「あのセンコーの授業は予習していかないとヤバイ」などというのは教師=官憲と見立てた用語であろう。このように一般市民用語化された後も「(規則、規範などに反して)まずい」意味で使われてきた。
 
ところが、2005年頃から若者の間で意味が転移し、むしろ肯定的な用法が目立ってきた。
 
用法1:
 (女装コンテスト出場の男性を見て)「特に 眼と脚がヤバイ」(TV.「笑っていいとも」よ り)
 ・・・・・「予想以上の高い評価」を表現す 
 る。これほどまでに女性っぽいとは意外 だ。素晴らしいということだ。
 
用法2:
 (街を探訪して、旨い店を見つけて)
 「****の串焼きがヤバイ!」
 ・・・・・一般人ブログなどでの使用例多  数。これは(今までこの店を発見できな 
 かった)自分がヤバイという意識を表し  ている。
 
用法3:
 「ヤバイ、スゴイ、こんなループ」
 (SOUND &RECORDING  
 MAGAZINE,リットーミュージックより)
 ・・・・・・ループとはハウス系音楽に使用 
 するためのリズムやフレーズの繰り返し
 である。
 これは用法2と似ているのだが、用法2が
 書き手の内省的な想いに重点を置いて 
 いるのに比べ、こちらは初めて公衆に披 露するときの先端者との先取り意識〜つ まり、「おまえらは知らんだろ意識」に立 
 脚している。
 お勧めの店、テクニック、ファッションなど の紹介に多用される。
 
 この三用法に見られるように、つまり、 
 「ヤバイ」が肯定的な意味に転化したと
 言っても、それには否定的な意味の裏打 ちがあるのだ。
 



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